Leave No Trace(LNT)という考え方は「自然を守るためのルール」ではなく、自然と関わり続けるための態度と以前にご紹介しました。では、実際の現場ではどのような行動として表れているのでしょうか。
多摩川上流・御岳を拠点に、川と人をつなぐ活動を続けている柴田大吾さんは、その一つの答えを毎週月曜日の「リバークリーン」というかたちで実践しています。
柴田さんは、青梅市・御岳渓谷で「みたけレースラフティングクラブ」を運営し、ラフティングやパックラフトなど川をフィールドにした体験ツアーを運営してきました。その取り組みは「川で遊ぶ」「楽しむ」ことだけにとどまりません。毎週月曜朝のリバークリーン(川の清掃活動)を通して、子どもたちや地域の方にも自然と関わるきっかけをつくり、川を身近な存在として感じてもらう活動を続けています。
柴田さんは、リバークリーンについて「続けてみないと、見えてこない変化がある」と話します。多摩川でのゴミ拾いというと一度きれいにすれば終わりというイメージを持つ方も多いかもしれませんが、大切にしているのは「一度きり」ではなく、続けることでした。
川の状態は日々変わります。雨が降れば上流からゴミが流れてくることもありますし、人の利用の仕方によっても風景は変わります。だからこそ、「今日はどうなっているか」を見続けることが欠かせないのだそうです。その中で特に意識しているのは「ゴミがない状態を当たり前にすること」。ゴミが落ちていても誰も気にしなくなると、それがその場所の“普通”になってしまいます。
多摩川でも下流に行くにつれて、残念ながら「ゴミがある風景」が日常になっている場所があります。一方で、御岳周辺では、少なくとも「ゴミがあるのが当たり前」にはなっていません。柴田さんは、その状態を少しずつ下流へ、羽田の方まで広げていきたいと考えています。
ゴミ拾いを自然な行動にする
これらの背景にあるのは「川で遊ぶ人の存在」です。柴田さんたちは、自分たちを“パドラー”と呼び、日常的に川で漕ぎ、遊び、自然と関わっています。そうした人がいる場所では、ゴミを拾うことも特別な活動ではなく、自然な行動になります。
和泉多摩川周辺にはパドラーのコミュニティがあり、柴田さんが御岳から羽田まで何度も川を下ってきた中でも、「あそこだけは明らかにゴミが少ない」と感じる場所なのだそうです。湧き水があり、もともと環境が良いという理由もありますが、それ以上に「その場所に愛着を持って関わり続ける人がいること」が風景をつくっているのではないかと柴田さんは考えています。
こうした場所が点ではなく線となり多摩川のあちこちに広がっていけば、川の姿も地域の関わり方も変わっていくはずです。柴田さんは、「遊ぶ人がいて、コミュニティがあって、地域とつながっている。そんな流域が増えたら世の中はちょっとハッピーになると思う」と話してくれました。
LNTの考え方は、川のゴミ拾いに限った話ではありません。一度きりの取り組みではなく、関わり続けることで見えてくる変化。正解を押しつけるのではなく、「当たり前」を少しずつ育てていく姿勢。
東京の森や川をフィールドにした企業向け研修では、こうした現場の実践や対話を通して、チームで考え、関係性を育てる時間を大切にしています。自然と向き合う体験が、組織や働き方を見つめ直すヒントになるかもしれません。
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