前回に続き、多摩川上流・御岳を拠点に川と人をつなぐ活動を続ける柴田大吾さんに、LNT(Leave No Trace)についてお話を聞いてきました。柴田さんは、青梅市の御岳渓谷を拠点に活動する「みたけレースラフティングクラブ」の代表を務めています。川をフィールドにしたさまざまなリバーアクティビティの体験ツアーを行っています。

「好きな場所を守りたい」、今回の取材で柴田さんがまず口にした言葉です。たしかに「川を守ろう」「自然を大切にしよう」というメッセージを、私たちはネットやSNSを通して目にする機会が増えています。一方で、それが自分の暮らしとどうつながっているのかを実感するのは、意外と難しいものです。

柴田さんは、その結果、取り組みそのものが“ファッション”になってしまうこともあると感じているといいます。「みんながやっているから」「正しいとされているから」という理由だけでは、行動は長く続かないと話してくれました。

LNTも、ときに「環境に配慮した、おしゃれな考え方」と受け取られることがあります。しかし、柴田さんが大切にしているのはLNTの根底にある「Protect the places you love(自分の好きな場所を守る)」という言葉です。

楽しさの先にある、自然を守る行動

守りたい場所があるからこそ、行動が生まれます。川が楽しい、山が気持ちいい、この場所が好きだという思いがあるから、「また来たい」「次は誰かを連れてきたい」と思える。そして、そのために「どうしたら、この自然を残せるだろう」と考えるようになります。柴田さんにとって、アウトドアを楽しむことと環境への配慮は切り離せないものです。楽しさの延長線上に、自然を守る行動がある。それがLNTの本質だと話します。

LNTは、「こうしなければならない」というルールではありません。どんな行動が、どれくらい自然に影響を与えるのかを知り、そのうえで「自分はどうするか」を考えるための考え方です。大切なのは完璧を目指すのではなく、できるところから少しずつ考えて行動すること。

実体験があるから、守りたいと思える。守りたいと思えるから、行動が続く。柴田さんの活動は、その順番を何度も現場で確かめながら、自然と人との関係を育てていく取り組みなのだと感じました。心が動く体験があって、初めて「自分ごと」になります。

東京の森や川で行われる企業研修では、自然の中で体を動かし、火を囲み、対話を重ねる時間を通して、「なぜ守りたいのか」「どう関わり続けるのか」を考えていきます。

競争ではなく共創へ。自然から学ぶ時間が、これからのチームや企業のあり方を静かに問い直します。

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